年が明けて2週間が経つ頃、出産予定日にほとんど狂いなく、私の体から赤ちゃんが産まれてきました。
何か月も毎月毎週と通い続けた産科のエコーは、お腹が大きくなるとともに画面がまっ黒になってきて、ポンポンの臨月の頃はとうとう、渡されたエコー写真は宇宙の星屑のようになってしまいました。
「もうすぐだね」「楽しみだね」と周囲に言われ続けても、私は自分のお腹の中がどうなっているのかピンと来なくて、ピンと来ないままとうとうその日が来てしまい、まるでいつか見たドラマを自分が主役で演じているような、そんな不思議な気持ちのまま分娩台に乗り、ドラマで見たそのままの感じでお産がすすみ、見たことがあるような赤ちゃんが突然この世に出てきました。
その瞬間 ピカっと突然ひらめきのような感覚があって、すべてが腑に落ち、安堵と確信がどどどと私の体中に広がりました。あれは何だったんだろう。
服を作る仕事に就いて何年も経って、一年は春夏、秋冬の展示会にふりまわされながら瞬く間に過ぎ、ファッションの事ばかり考えて私も歳をとってきました。
気分がいい時はそのバカバカしさと難しさと儚さが楽しくて、気分が悪い時はそのすべてがつまらなく、春夏秋冬、季節と時の流れは私にとっては、ただ展示会を重ねていくだけの事でした。
子供が産まれて、初めての春が来ました。
私にも、新しい時間と季節がとても久しぶりにやってきました。